障害者虐待防止法の概要

平成24年3月27日
 

第1 成立の経過

1 平成23年6月17日成立,平成24年10月1日施行

児童虐待防止法,高齢者虐待防止法と並ぶ「虐待防止三法」
 

2 障害者虐待の特徴

① 顕在化しにくい。虐待からの救済方法がない。
 →障害者虐待に特化した法律の必要性
② 家庭や施設以外にも多く見られる。
→障害者の生活全般の虐待事例に横断的に対応できる法律の必要性
 

第2 基本理念等

1 基本理念(1)…何を目的としているのか?

① 障害者の保護
「何人も障害者に対して虐待をしてはならない。」(3)
② 自立の支援(「自立と社会参加」)
③ 養護者の負担軽減  ×虐待者の取締り
 

2 定義(2)…どんな場合に適用できるのか?

(1)「障害者」(Ⅰ)
「身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある者であって,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」(改正障害者基本法2Ⅰ…平成23年8月5日施行)
→障害者手帳の有無にかかわらない(社会モデル)。
(2)「障害者虐待」(Ⅱ)
① 養護者による障害者虐待(在宅)
② 障害者福祉施設従事者等による障害者虐待(施設)
③ 使用者による障害者虐待(職場) 
(3)「虐待」(Ⅵ,Ⅶ,Ⅷ)5類型
① 身体的虐待  ※「正当な理由」のない身体拘束も含む。
② 性的虐待
③ 心理的虐待  ※施設と職場では「不当な差別的発言」を例示
④ 世話の放棄・放任  ※同居人等の虐待を止めない場合も含む。
⑤ 経済的虐待  ※「親族」も含む。
 

3 通報義務…早期発見のための工夫は?

(1)一律の通報義務(7Ⅰ,16Ⅰ,22Ⅰ)
×「生命身体に重大なおそれ」

(2)通報に係る守秘義務の免除(7Ⅱ,16Ⅲ,22Ⅲ)
    ただし,施設と職場では,誤通報が守秘義務違反になりうる。

(3)通報・届出を受けた市町村の職員は守秘義務(8,18,25)

(4)施設と職場における不利益取扱いの禁止(16Ⅳ,22Ⅳ)
    ただし,誤通報は不利益取扱いの対象になりうる。
 

第3 在宅,施設,職場における虐待対応の概要…どこ(誰)が何をするのか?

1 在宅における虐待対応

(1)「養護者」(2Ⅲ)
現に養護する者(≠扶養義務者,同居人)

(2)対応方法
① 市町村の責任
② 事実確認と対応協議(緊急性の判断)(9Ⅰ)
③ 個別ケース会議による虐待対応計画の作成
④ 立入調査(11,12,46) ×犯罪捜査
⑤ 障害者と養護者に対する相談,指導,助言(32Ⅱ)
⑥ やむをえない事由による措置(9Ⅱ)…一次的な保護
  身体障害者福祉法18Ⅰ・Ⅱ,知的障害者福祉法15の4,16Ⅰ②
     ◇ みなし規定(手帳がない場合や発達障害や精神障害も一時保護可)
     ◇ 居室の確保(10)
     ◇ 面会制限(13)
⑦ 市町村による成年後見制度開始審判の請求(9Ⅲ)
     精神保健福祉法51の11の2,知的障害者福祉法28
   

2 施設における虐待対応

(1)「障害者福祉施設従事者等」(2Ⅳ)
(2)対応方法
① 通報・届出の受付は市町村
② 通報・届出を受けた市町村は,都道府県に報告(17)
③ 市町村・都道府県は,社会福祉法,障害者自立支援法等の権限を適切に行使する(19)。
   ex.報告の徴収,出頭質問権,立入調査,監査,指定取消し等
 

3 職場における虐待対応

(1)「使用者」(2Ⅴ)
事実上の指揮監督を及ぼす立場にある者全て(=労働基準法10条)
(2)労働者への研修の実施や苦情処理体制の整備(21)
(3)対応方法
① 通報の受付は市町村又は都道府県(22)
② 通報を受けた市町村は都道府県に通知(23)
③ 都道府県は労働局に通報(24)
④ 労働局・労基署・職安所は,都道府県と連携して,労働基準法等の権限を適切に行使する(26)
※特に労基署には,労働基準法上,臨検調査権(101条),労基法違反の罪に関する捜査権限(102条),寄宿舎の安全衛生に関する規制権限(103条),報告・出頭命令(104条の2)などの強力な権限あり。
 

第4 学校・保育所等・医療機関

自主的な虐待防止対策のみ(29,30,31)
cf.セクハラ防止
※見直しの議論の余地あり
 

第5 対応機関の設置

1 市町村障害者虐待防止センター

(1)第一次的に対応する機関
but「機能を果たすようにする」(32Ⅰ)
→設置≠創設
(2)業務(32Ⅱ)
① 虐待の通報・届出の受理
② 相談,指導,助言
③ 啓発活動
(3)業務の一部は委託できる(33)。
(4)専門職員の確保(34)
(5)連携協力体制の整備(35)
 

2 都道府県障害者権利擁護センター

(1)業務(36Ⅱ)
① 使用者虐待の通報・届出の受理
② 市町村の支援
③ 障害者・養護者の支援のために,相談に応じ,相談機関を紹介
④ 障害者・養護者の支援のために,情報提供,助言,関係機関との調整
   ⑤ 情報の収集,分析,提供
   ⑥ 啓発活動
(2)業務の一部は委託できる(37)。
(3)専門的職員の確保(38)
(4)連携協力体制の整備(39)
 

第6 他の法律との関係

1 家庭の障害児
→児童虐待防止法
2 家庭の高齢障害者
→障害者虐待防止法,高齢者虐待防止法,DV防止法
3 施設入所等の障害者
→施設等の種類(障害者施設等,児童養護施設等,要介護施設等)に応じて,障害者虐待防止法,児童福祉法,高齢者虐待防止法
4 使用者による虐待
→障害者虐待防止法のみ
以上

講演実績

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H22. 9. 8  司法修習生及び若手会員対象選択型修習講師(高齢者虐待防止法)
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H22. 6.14 不当要求防止責任者講習講師
H22. 3. 8  消費生活相談員養成講座講師(特定商取引法)
H21.11.26 消費生活相談員養成講座講師(特定商取引法)


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