社会福祉士コラム

社会福祉に関するコラムを掲載しています。色々な福祉制度の理解だけで なく,私たちがどんな社会を目指すのか,考えるヒントになれば幸いです。

平成25年に社会福祉士資格を取得した、代表弁護士板村のインタビューも掲載しております。同じ道を目指されている方へ、エールを送ります!

コラム一覧

 


量的調査と質的調査の特徴について

量的調査は,数値化できるデータを集め,その集めたデータから元の調査対象の集団の性質を統計学的に探ろうという社会調査の方法です。

量的調査を分類すると,調査対象をすべて調べる全数(悉

皆)調査と,調査対象の一部を調べ,母集団の特性を推測する標本(一部)調査とに分けられます。そして,標本調査は,標本の抽出方法によって,無作為抽出法,層化抽出法,二段抽出法,有意抽出法等に分けられます。

 

また,時的な分類方法として,ある一時点で複数の対象を横断的に比較調査する横断調査(クロスセクショナルデータ)と,特定の調査対象を一定の時間間隔をおいて繰り返し調査する横断調査(時系列調査)とに分けられます。

 

量的調査には,①被調査者(調査対象者)が具体的にいかなる母集団を代表しているのかを統計学的に検討することができる,②調査データの収集の成否が調査者(調査員)の能力や経験に大きく左右されない,③調査票の工夫により調査活動の時間と費用を節約でき,得られたデータの分析においても計量的処理が容易になる等の特徴があります。

 

他方,質的調査は,質的データ(数字には還元しない言語により記述されたデータ)の分析を通して,現象の記述,仮説生成あるいはモデル生成を目的とする社会調査の方法です。

 

質的調査では,調査者が調査対象と面接して質問を行う面接法や,調査対象を観察する観察法により調査が行われます。

 

質的調査には,①少数の被調査者の体験を集中的かつ徹底的に探究することによって調査者がその体験を追体験して,その体験や事象の深層まで理解することができる,②形式的かつ画一的な質問や限定された回答の選択肢を用いてのアンケート調査ではなく,調査対象となっている事象や事実の多くの側面を多元的,全体関連的に把握することができる,③調査者の主観的かつ価値判断的な認識や洞察力を通して事象のより根源的な把握がなされ,分析をより洞察的かつ普遍的に一般化することができる,④時間を遡って順を追って質問することができるため,事象の移り変わりなど変化のプロセスと変化の因果関係をダイナミックに把握することができる等の特徴があります。

 

量的調査と質的調査の特徴の背景には,それぞれ異なる認識論があります。

 

量的調査が依拠する論理実証主義は,ある命題に関して,唯一無二の真実が人の外部にあるとし,客観的,主観的という二分法もこの認識論に由来します。すなわち,人には内面と外部があり,人はその外部にある事象を把握できるという考え方です。

 

他方,質的調査の認識論は,真実は唯一無二に存在するのではなく,社会的,文化的,歴史的な文脈に依存し,変わりうると考えます。質的調査においては,内面と外部は相互浸透していて区分することはできないとされるため,客観的,主観的という二分法的な発想は用いられません。

 

量的調査と質的調査の特徴は,どちらの方が正しいとか優れているというものではなく,互いに補い合うものといえるでしょう。

ソーシャルワーク実践における倫理的ジレンマについて

ソーシャルワーク実践における「倫理的ジレンマ」とは,相反する複数の倫理的根拠が存在し,どれも重要だと考えられる場合,ソーシャルワーカーがどうすればよいか葛藤することです。

倫理的ジレンマには様々なものがありますが,その1つに,クライエントの自己決定と権利擁護のジレンマがあります。クライエントの自己決定は尊重されるべき重要な価値ですが,クライエントの自己決定が自傷他害の危険を招く場合,そこにジレンマが生じます。

 

設例で考えてみます。高齢者の女性Aが,同居する長男Bから身体的虐待を受けて健康を害している状況で,ケアマネCが虐待の事実を発見してD市に通報しました。その結果,D市包括支援センター職員がAに施設への一時入所と病院での治療を勧めましたが,A自身がBとの同居を希望して施設入所を断っている場合,自己決定と要保護性のジレンマが生じます。

 

倫理的ジレンマに正解は存在しませんが,専門職として最も倫理的だと考えられる判断を下すためには,一定の判断過程に沿って,あらゆる社会資源を活用し,多様な視点から検討を行う必要があります。

 

具体的には,①倫理的課題を把握する,②倫理的判断で影響を受ける個人,集団,組織を把握する,③すべての選択肢を考え,関連する全ての対象に対するプラスとマイナスの影響を考える,④各選択肢に対する賛成と反対の理由を検討する,⑤同僚や専門家のコンサルテーションを得る,⑥判断を行い,その過程を記録に残す,⑦倫理的判断を実践,モニタリング,評価し,記録に残す,というプロセスで検討します。

 

設例では,①Aの保護を考えればBと分離するべきですが,その場合Bとの同居を続けたいというAの自己決定との間に倫理的ジレンマが生じます。また,②影響を受ける範囲は,A・B親子,ケアマネのC,別居しているAの親族,D市,病院,一時入所先の施設,警察に及ぶと考えられます。

 

③選択肢としては,AとBを分離させるか否かで分かれます。分離させない場合,Aの自己決定を尊重することになり,Bに対する影響も少ないですが,虐待行為が続けばAの生命身体に危険が生じます。他方,分離させた場合,Aの安全は確保される一方で,Aの自己決定に反することになり,またBが分離に抵抗する可能性もあります。④倫理原則選別リストによれば,分離させる選択肢は,虐待の程度にもよるが,生命の保護の原則(原則1)及び危害最小の原則(原則4)の観点から賛成できます。他方,自己決定と自由の原則(原則3)の観点からは反対となります。

 

⑤D市はケース会議を開き,主治医や弁護士の意見も聞きながら分離の必要性を検討することになります。そして,Aの判断能力,負傷の程度,虐待の原因(Bのケアの必要性)等について検討し,⑥その検討過程を記録に残します。⑦例えば,Aの判断能力と体力が著しく低下しているため措置で一時的に施設入所させた場合でも,継続的にモニタリングと評価を行い,記録に残します。

以上のようなプロセスを経て検討することになります。

高齢者ケアマネジメントの特徴と展開について

高齢者のケアマネジメントは,相談援助と同様に高齢者個人とその家族を支援の対象とします。

ただ,相談援助が伝統的に心理社会的な治療機能を重視してきたのに対し,ケアマネジメントは,生活能力のアセスメントに基づく社会資源の活用・調整・モニタリングの機能を重視し

ている点に特徴があるといえます。

わが国では2000年4月から介護保険法が施行され,資格を有する介護支援専門員(ケアマネジャー,以下「ケアマネ」といいます。)がケアマネジメントを担当しています。

具体的には,要介護の高齢者に対して,居宅介護支援事業所のケアマネが,要介護度に応じて設定されている支給限度基準額をふまえて介護サービス計画(ケアプラン)を作成します。

 

また,2006年から導入された予防介護については,要支援と認定された高齢者に対して,地域包括支援センター等において介護予防ケアマネジメントが実施されています。

 

ケアマネジメントは,一般に,①インテーク・契約,②アセスメント,③ケース目標の設定とケアプランの作成,④ケアプランの実施,⑤モニタリング,⑥ケアプランの見直しと新プランの実施,⑦終結,というプロセスによって展開されます。

 

まず,ケアマネは,高齢者の状況や意思を把握するとともに,事業所の特性等の情報を利用者に正しく伝えて最適なマッチングを図り,サービス利用契約が円滑に締結されるよう支援します。

 

そして,契約終了後は詳細なアセスメントを行い,アセスメントに基づいて今後の目標と課題を検討し,必要な支援の方法やサービスを盛り込んだケアプランを作成します。

 

立案したケアプランが利用者本人及び家族によって合意され,サービス提供機関との連絡・調整が完了した段階で,ケアプランが実施に移されます。

 

ケアプランが実施に移された後も,ケアマネは,高齢者の状況やニーズに変化がないか定期的にモニタリングを行い,必要に応じて再アセスメントを実施します。

 

再アセスメントによってサービスの変更や追加の必要性が明らかになった場合には,ケアプランの見直しを行い,新たなケアプランを作成することになります。

 

高齢者の転居や死亡等によってサービスは終結しますが,ケアマネは必要に応じてフォローアップを行い,遺族への悲嘆ケアを行う場合もあります。

 

他方,介護予防ケアマネジメントは,介護予防を具体的な目標とする点に特徴があり,生活自立度が比較的高い高齢者を対象として,介護予防に対する意欲を引き出す支援や,地域全体で介護予防に取り組む支援を展開することになります。

社会福祉士・介護福祉士法2007年改正について

社会福祉士及び介護福祉士法は,1987年に成立し,2007年に大幅改正されました。介護・福祉ニーズの多様化・高度化に対応し,人材の確保・資質の向上を図るためです。特に社会福祉士については,利用者がサービスを選択できる制度を導入したことに伴い,サービスの利用支援だけでなく,成年後見や権利擁護など新しい相談援助分野への業務拡大が背景にありました。

 

2007年の法改正では,主に,①定義規定の見直し,②義務規定の見直し,③資格取得方法の見直し,④社会福祉士の任用・活用の見直しが行われました。

まず,定義規定の見直しでは,社会福祉士について,「社会福祉士の名称を用いて,専門的知識及び技術をもって,身体上若しくは精神上の障害があること又は環境上の理由により日常生活を営むのに支障がある者の福祉に関する相談に応じ,助言指導,福祉サービスを提供する者又は意思その他の保健医療サービスを提供する者その他の関係者との連絡及び調整その他の援助を行うことを業とする者」(第2条)と定義されました。これは,社会福祉士が「相談援助」を行う専門職であるところ,福祉課題を抱えた者に対して自ら援助するだけでなく,他の専門職と「連携」して総合的に援助を行うことが明らかにされたものといえます。

また,義務規定の見直しでは「誠実義務」と「資質向上の責務」が加わり,他職種との「連携」の規定が見直されています。「誠実義務」では,「その担当する者が個人の尊厳を保持し,その有する能力及び適性に応じ自立した日常生活が営むことができるよう,常にその者の立場に立って,誠実にその業務を行わなければならない」(第44条の2)とされています。また,「資質向上の責務」では,資格取得後の自己研鑽が求められています(第47条の2)。さらに,「連携」においては,「福祉サービス及びこれに関連する保健医療サービスその他のサービスが総合的かつ適切に提供されるよう,地域に即した創意と工夫を行いつつ,福祉サービス関係者等との連携を保たなければならない。」(47条1項)とされました。どれもソーシャルワークには欠かせない義務だと思います。

その他,資格取得方法の見直しでは,国家試験受験資格を得るために必要な講義演習,実習の教育内容や時間数が,新たに定められました。また,社会福祉士の任用・活用の見直しでは,社会福祉主事課程修了者は2年以上の実務経験と6ヶ月以上の社会福祉士養成課程を経て国家試験の受験資格が得られるようになり,身体障害者福祉司や知的障害者福祉司の任用資格として社会福祉士が位置づけられるようになりました。

これからの社会福祉士には,総合的かつ包括的な相談援助の担い手として,地域に根付いた社会福祉の専門職であることが求められます。例えば,虐待(高齢者・児童・DV)などの現代的課題に対応するためには,個々の法令や福祉サービスの知識だけでなく,行政,地域住民,警察及び弁護士等と地域のネットワークを構築し,地域全体でクライエントを支えていく意識と行動力が求められます。

介護保険と地域包括ケアシステムについて

高齢者は,住み慣れた地域における人間関係や生活を基盤にして,老化に伴う変化に対応します。

2000年に始まった介護保険制度も,当初は地域における在宅ケアを重視して出発しました。しかし,制度施行後,在宅ケアの提供体制が不十分であったため,かえって施設への入所希望者が増えてしまいました。

その結果,高齢者は何らかの介護が必要になった場合,地域から遠く離れた施設へ入所することになり,地域における既存の人間関係や生活から断絶されるようになりました。

そこで,2005年の介護保険制度改正では,このような弊害を無くし,高齢者が必要に応じたケアを受けながら住み慣れた地域で暮らし続けられるよう,「地域包括ケアシステム」の構築が目標として掲げられました。

システム構築の核となるのが地域包括支援センターであり,①包括的・継続的ケアマネジメント支援事業(支援困難事例などへの助言・指導やネットワーク構築を通して地域の介護支援専門員らの実践を後方支援する。),②総合相談支援事業,③権利擁護事業(行政や医療機関など地域にある様々な制度や資源を活用または組織化して,虐待防止を含めた権利擁護を図る。),④介護予防ケアマネジメント事業(要支援高齢者や近い将来に介護を必要とする可能性の高い特定高齢者に対するケアマネジメント・サービス)を担っています。

しかしながら,2005年の制度改正後も,介護保険の要介護(要支援)認定者,サービス受給者や給付費は増え続けました。

そこで,①医療との連携強化,②介護サービスの充実強化,③予防の推進,④見守り,配食,買い物など,多様な生活支援サービスの確保や権利擁護など,⑤高齢期になっても住み続けることのできる高齢者住まいの整備,という「5つの視点」から取組みが進められ,「介護サービスの基盤強化のための介護保険法等の一部を改正する法律」が2011年6月15日に成立しました(2012年4月1日から施行)。

団塊の世代(約800万人)が75歳以上となる2025年(平成37年)以降は,国民の医療や介護の需要がさらに増加することが見込まれています。

そのため,厚生労働省は,2025年(平成37年)を目途に,高齢者の尊厳の保持と自立生活の支援の目的のもとで,可能な限り住み慣れた地域で,自分らしい暮らしを人生の最期まで続けることができるよう,地域の包括的な支援・サービス提供体制(地域包括ケアシステム)の構築を推進しています。

地域包括ケアシステムは,市町村や都道府県が地域の特性に応じて作り上げていくものであり,要支援や要介護に該当する人だけでなく,すべての高齢者が安心した生活を送れるよう地域全体で支えていくことが必要です。

面接における非言語コミュニケーションについて

人と人との間では,言語的なメッセージだけでなく,非言語的なメッセージによってコミュニケーションが図られます。

一般に,非言語的なメッセージは,①表情,②視線・アイコンタクト,③動作,④姿勢,⑤身体の位置・距離・接触,⑥声の調子・抑揚・強弱,⑦間・速度,⑧その他(ため息など)で表され,このような非言語のメッセージは無意識に多用されます。

ソーシャルワーカーがクライアントと面接する際は,まず,適切に非言語メッセージを伝えることが重要です。ソーシャルワーカーが非言語的に伝えるメッセージとしては,例えば,「あなたを援助する意思をもっている」,「あなたを援助する準備ができている」,「あなたを決して拒否しない」などがあります。これら非言語のメッセージを伝えるソーシャルワーカーが,落ち着いた態度で共感している表情ができることは,クライエントを支えることにつながります。

また,お互いが話しやすい適切な体の位置や距離にも留意する必要があり,適切なアイコンタクトは,それだけで適切なコミュニケーションとなります。

次に,クライエントへの非言語的な反応も重要です。ソーシャルワーカーの表情,視線,相づち,頷きなどは,話を共感的に聴いているかどうかということを言葉以上に表すものです。

適切なタイミングでの相づちや頷きがあれば,「自分の話に関心があり,一生懸命聴いてくれている」という確信をクライエントは得ることができます。適切な非言語的反応は,クライエントが多くを語り,肯定的に自らのことを考えるために無くてはならないものです。

クライエントの中には,様々な障害を抱え,あるいは辛い出来事で感情が揺れ,言語的メッセージが正確に伝わらない場合も少なくありません。その様な場合でも,非言語的なコミュニケーションは有効です。

ただし,クライアントに応じて使い分けることも忘れてはなりません。

以前,クライエント(精神障害を抱えた高齢者)との最初の面接において,周囲と同様にフランクに話しかけて怒らせたことがあります。このときは,少し距離を置いて丁寧語で接したところ,却って上手くコミュニケーションを図ることができました。

特に最初の面接においては,先入観を持たず,自分とクライエントとの距離感を慎重に測りながら,非言語コミュニケーションを適切に使い分ける必要があります。

各国の介護費用支出と規模について

OECD各国の介護支出(民間支出を含む)の規模(GDP比)と特徴を比較すると,まず,スウェーデンは,介護支出の規模が大きく,公的指向が最も強いことが分かります。

ただし,スウェーデンの介護支出の規模の大きさは,その人口規模(総人口945.5万人(2011年))も影響していると思われます。人口規模は,行政運営の効率性や給付の手厚さとも密接に関連するからです(この点は,同じ北欧のノルウェーも同様です。)。

そして,スウェーデンでは,基礎自治体であるコミューンが介護サービス供給の最終的責任を負っており,公的支出割合の高さを担保しているという点に特徴があります。
これに対し,アメリカは,その人口規模(総人口3億700万人(2009年))からすれば,介護支出の規模自体は決して小さいとはいえませんが,他の国々と比べると民間指向が強いことが分かります。介護サービス事業に民間業者が多く参入しており,介護支出に占める民間支出の割合が高いのです。
アメリカにも,公的な介護保障に相当する制度として,メディケア(主として高齢者を対象とした公的医療保険)とメディケイド(低所得者を対象とした医療扶助)が存在しますが,保障の対象は限定的です。
ドイツは,介護支出の規模でも公的指向でも,スウェーデンとアメリカの中間に位置しています。ドイツの人口規模(総人口8200万人(2008年))からすれば,介護支出の規模自体は小さくありません。
ドイツでは介護保険制度による保障が中心となっていますが(公費投入は行われず社会保険料によって支えられている点に特徴があります。),他方で,介護保険制度導入後,介護サービス事業に営利法人が参入するようになり,次第に民間指向も強まっています。
上記の各国と比べると,我が日本は,公的指向が相対的に強く,そのうえ支出の規模が小さいことが分かります。ただし,日本でも介護保険制度の普及により介護支出の規模が次第に大きくなっています。
また,近年,日本でも介護サービス事業に多数の民間事業者が参入しており,民間指向も強まっています(加えて,統計数値に表れない要素として,同居率が高い日本では家族が無償で多くの介護負担を担っている状況を忘れてはならないでしょう。)。
日本では急速に高齢化が進んでおり,今後も介護支出の規模は確実に大きくなると予想されます。他方で,日本は,上記の各国と比べて税・社会保険料の徴収規模が小さいため,公的支出の増加には限界があり(現在は国債で賄っている状態です。),今後はより民間指向が強まると思います。

障害者虐待防止法の概要について

「障害者虐待の防止,障害者の養護者に対する支援等に関する法律」(以下「障害者虐待防止法」といいます。)は,平成23年6月17日に成立し,平成24年10月1日から施行されました。

虐待に関する法規制としては,既に児童虐待防止法及び高齢者虐待防止法が存在します。しかし,障害者虐待は,児童や高齢者の虐待と異なり,障害とそれに対する周囲の無理解によって,そもそも障害が顕在化しにくい,あるいは救済が困難であるという特徴があり,障害者に照準を合わせた法体制の整備が急務でした。

障害者虐待防止法は,①障害者の保護だけでなく,②障害者の自立と社会参加の支援や,③養護者の負担軽減も目的としています。

 

そして,障害者虐待防止法における「障害者」は,「身体障害,知的障害,精神障害(発達障害を含む)その他の心身の機能の障害がある者であって,障害及び社会的障壁により継続的に日常生活又は社会生活に相当な制限を受ける状態にあるもの」(障害者基本法第2条1項)と定義されています。
これは,障害者観について従来の「医学モデル」ではなく「社会モデル」を採用したものであり,障害者手帳等の有無にかかわらない虐待防止を可能にしました。

 

ただし,障害者虐待防止法が具体的防止策を定める「障害者虐待」は,①養護者による障害者虐待(在宅),②障害者福祉施設従事者等による障害者虐待(施設)及び③使用者による障害者虐待(職場)に限定されています。学校,保育所及び医療機関については,それらの機関の長ないし管理者に対して防止等のための措置の実施を義務付けるに留まりました。

 

虐待防止策としては,まず,「何人も,障害者に対し,虐待してはならない。」と虐待防止を高らかに宣言し,通報義務を一律に何人にも課しています。

 

そして,在宅においては,市町村が虐待の通報を受理し,市町村の責任で安全確認と事実確認を行い,虐待の認定と緊急性の判断をし,必要な場合には保護措置をとり,その後,関係機関との個別ケース会議における協議により,虐待対応計画を立て,各関係機関の役割分担の下,必要な支援を行うことになります。
また,施設においては,市町村が通報や本人からの届出を受理し,都道府県に通報するとともに,市町村または都道府県が,障害者自立支援法や各障害者福祉法などの関係法規上の権限を行使して,当該施設の福祉的給付の適正を図ることで,障害者の保護と自立支援を確保します。
さらには,高齢者虐待防止法と異なり,使用者(職場)による虐待防止が規定され,市町村と都道府県及び労働関係行政の対応の責務が設けられました。

 

これは,障害者が,職場において暴力・金銭搾取等の非常に深刻な虐待を受けてきた実態を考慮し,都道府県労働局・労働基準監督署・公共職業安定所の対応責任を明確にしたものです。労働基準監督署等は,立入調査権を含む強力な権限を有しており,これにより障害者虐待防止に向けた積極的な役割を果たすことになります。

 

なお,市町村及び都道府県は,それぞれ障害者虐待対応の窓口等となる「市町村障害者虐待防止センター」及び「都道府県障害者権利擁護センター」として重要な機能を果たすことが期待されています。

社会福祉法人の現代的課題について

措置制度の時代,社会福祉法人の施設運営は,全国一律の設備・人員配置に関する基準に沿ったサービス提供を前提とするものであり,一定水準以上のサービスの確保には寄与するものの,画一的なサービスが生まれやすくなっていました。

また,大部分を措置費によって賄われていた社会福祉施設の運営は,「措置費で積算された使途にのみ用いる」という考え方が強かったといえます。

 

かつて,地方公共団体においては,一つの施設を整備するたびに新たな法人を設立させる指導が行われる場合が多く,そのため一法人一施設という零細な規模の法人が現在でも多数あります。

 

さらに,社会福祉法人には,同族的経営が多くみられます。その要因として,社会福祉事業に熱意のある篤志家が,その熱意と資産をもって法人を設立したとしても,長い間措置費が十分でなかったことから,事業継続のためには家族・親族の奉仕的な労働に頼らざるを得なかったことが挙げられます。また,土地や建物の一部を寄付で賄ったこと,施設整備の借入の際に同族以外に保証人のなり手がいなかったことなども,その要因となっています。

 

零細な規模の法人経営や同族的経営は,これまで「事業の新規開設・継続性」という点においてプラスにも捉えられてきました。しかし,法人・施設の主要な職を同族が占めることで職員が将来に向けての展望を拓けず,有能な人材の確保・育成に支障をきたしているという弊害が生じているとも言われています。
今日,わが国の福祉政策に関する規制改革では一定の条件のもとで会社,特定非営利法人等民間の事業者の参入が認められ,利用者主体のサービス提供が推し進められています。また,「措置から契約」への流れを受けて,社会福祉法人の経営についても第三者評価制度や苦情解決制度などが導入され,より質の高いサービス提供が求められるようになりました。

 

規制緩和を求める声や,社会福祉法人の優遇措置に対するイコールフィッティング論など,地域福祉と社会福祉法人を取り巻く環境は日増しに変化しています。多様化する利用者,地域ニーズに応えるべく,社会福祉法人はこれまでの「施設運営」という枠から,「法人経営」という転換期にさしかかっています。

 

社会福祉法人の法的根拠は,社会福祉法にある訳ですから,その法の理念の体現者として,「個人の尊厳」「自立生活の支援」「良質なサービス提供」「地域における社会参加」を追求・実現できるように,その法人経営をより深化・発展させるべきでしょう。

地域福祉計画における住民参加の重要性について

地域福祉計画は,平成12年6月の社会福祉事業法等の改正により社会福祉法に新たに規定された事項であり,市町村地域福祉計画及び都道府県地域福祉支援計画からなります。

地域福祉計画では,地域住民が策定過程に参加し,その意見を十分に反映させることが重要になります。
地域住民による計画策定過程への参加方法としては,例えば,地方自治体の社会福祉審議会などの委員として参加し,福祉政策の現状や問題点などについて自らの意見を表明する方法や,福祉計画の「策定-実施-評価」という一連の過程に利用者として参加し,その要望を将来のあるべき姿に反映させていく方法があります。

 

例えば,防府市では,市が地域密着型サービスの提供事業者を指定する際,「地域密着型サービス運営委員会」の意見を踏まえることにしています。同委員会は,介護保険の被保険者や介護サービス利用者,事業者の代表者や保健・医療・福祉関係者,学識経験者等のメンバーで構成され,地域密着型サービスの質の確保,地域との連携の推進,施設の指導等について,必要な要望・助言・評価等を行っています。

 

そのような方法以外に,地方自治体が高齢者保健福祉計画を作成する際に行われるパブリックコメント(意見募集)で意見を出すことも,住民意思を福祉計画に反映させる参加方法の一つといえるでしょう。

 

ところで,地方自治体の福祉計画は,単なる行政計画ではなく社会計画としての側面も有しています。そして,福祉に関わる多様な行為主体(地方自治体,事業者,利用者・地域住民など)が,計画に関与(コミットメント)することによって,その実現性や実効性が高まります。その意味で,地方自治体における福祉計画では,その策定・実施・評価のいずれの過程においても,できるだけ多くの主体の関与を図り,協働していくことが重要になります。

 

また,地方自治体における福祉計画への住民参加には,住民がその過程でエンパワメントする(される)という機能もあります。住民は「参加」によって地域の福祉問題(ニーズ)に気づき,それらを共有し,自らの力で解決しようとします。まさに,参加とはエンパワメントそのものであるといえます。

 

例えば,静岡県富士宮市では,生活圏域の地域包括ケアシステムを構築するために必要な3つの機能として,①問題共有・地域課題提言機能(共助),②個別課題解決機能(共助・公助),③個別課題発見・抽出機能(自助・互助・共助)を挙げていますが,いずれの機能も,「共助」すなわち住民相互の「参加」を前提としたものであり,まさに住民参加によるエンパワメントを期待したシステムといえるでしょう。

保健医療サービス提供における社会福祉士の役割について

保健医療サービスを提供するにあたっての社会福祉士の主な役割は,医療ソーシャルワーカーとして様々なアセスメントを行うことです。具体的には,①チーム医療のなかで環境アセスメントを行い,②地域医療のなかで地域アセスメントを行います。

保健医療サービスの内容は,疾病構造の変化(健康転換)に伴って変化してきました。現代のような高齢化社会では,疾病構造は老人退行性疾患が中心になり(第3相),そのため,治療を目的とした医療サービスのみならず,同時に地域生活を支えるための保健・介護や福祉のサービス提供が求められるようになったのです。
すなわち,現代社会における保健医療サービスは,保健や医療の専門職のみならず,社会福祉専門職を含めた関係職種・関係機関,ときに当事者を含めた地域住民なども参加して行われる社会サービスの一種に変遷したといえます。そのため,保健医療サービスの目的も,単に治療だけでなく,健康を回復・改善・保持・増進することにまで拡大しました(「メディカルケア」から「ヘルスケア」へ)。
医療ソーシャルワーカーの活動領域も,従来は病院をはじめとした医療機関が中心でした。しかし,患者や家族にとっては,医療を受けることと,固有の人生/生活上の課題を背負いながら生きることとは常に並行して存在しています。そうした課題が保健医療サービスの主流となる時代になり,社会福祉士が医療ソーシャルワーカーとして位置づけられるようになりました。
そして,平成18年,厚生労働省と専門職団体である社団法人日本医療社会事業協会との間で,「医療ソーシャルワーカーとは,保健医療サービスにおいて生活相談を行う社会福祉士である。」と定義されるに至ったのです。
現代における保健医療サービスでは,チーム医療が提供主体の核となります。そのチーム医療のなかで,社会福祉士は,患者・家族の置かれている社会的環境のアセスメントを行う役割があります。また,自分達のチームとしての能力や患者家族に与える影響力をもアセスメントします。
保健医療サービスでは,医療側は権威的になりやすく,患者側は抑制的になりやすいといえます。私自身,家族の治療方針に対する疑問点について医師や看護師に質問した際,「申し訳ない。」という心理が働いた経験があります。このように患者が抑制していないかアセスメントを行うのが社会福祉士の役割であるといえるでしょう。また,地域や国の制度上で起こっていることが,チームや患者・家族に与えている影響などについてもアセスメントを行います。
さらに,現代における保健医療サービスでは,地域住民や関係機関との連携が必要となります。その地域医療連携で,社会福祉士は,地域のアセスメントを行い,地域の総合的なニーズを把握し,必要な社会資源の検証・評価を行う役割を担います。
さらに,地域のなかの一つの有力な社会資源としての病院を,関係機関との地域協議体のネットワークに入れ込むように病院へ働きかける役割も担っています。

朝日訴訟と堀木訴訟の意義について

朝日訴訟(最大判昭和42年5月24日民集21巻5号1043頁)は,1956年当時の生活扶助費月額600円が「健康で文化的な最低限度の生活水準」を維持するに足りるかどうかが争われた事件です。

一審判決は,原告(朝日茂)の主張を容れ,「健康で文化的な生活水準」の具体的内容は固定的ではないものの,理論的には特定の国における特定の時点において一応客観的に決定しうるから,厚生大臣の生活保護基準の設定行為は裁判的統制に服する「羈束行為」としました。その上で,生活水準を維持する程度の保護に欠ける場合は,生活保護法3条・8条2項に違反すると同時に,実質的には憲法25条にも反すると判示しました。

 

上告中に朝日氏が死亡したため養子夫妻が訴訟の承継を主張しましたが,最高裁は,生活保護受給権は一身専属的な権利であるから死亡により訴訟は終了したと判示しました。ただし,「なお,念のため」として,①憲法第25条1項は,すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるように国政を運営すべきことを国の責務として宣言したにとどまり,直接ここの国民に具体的権利を賦与したものではない(プログラム規定),②何が「健康で文化的な最低限度の生活」であるかの判断は厚生大臣の裁量に委されている,との意見を付加しました。

 

朝日訴訟によって,日本の社会保障・社会福祉の問題,とりわけ貧困問題に対する国民の関心が高まり,「人間らしく生きる」ことの意味,「人間の尊厳とは何か」が問われました。そして,この朝日訴訟をきっかけに,1961年以降,大幅な保護基準の引き上げが毎年行われ,当時の極端な保護行政の引き締めに歯止めがかけられました。そうした意味から,朝日訴訟は,日本の社会福祉の歩みのなかで意義深い訴訟であったといえます。

 

堀木訴訟(最大判昭和57.7.7民集36巻7号1235頁)も,「健康で文化的な最低限度の生活」の具立的内容は,「時々における文化の発達の程度,経済的・社会的条件,一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきもの」であり,それを立法に具体化する場合は,「国の財政状況を無視することができず,また,多方面にわたる複雑多様な,しかも高度の専門技術的な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とする。」と述べ,「具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は,立法府の広い裁量にゆだねられて」いると判示しました。

 

しかし,堀木訴訟の訴訟期間中に児童扶養手当法が改正され,児童扶養手当と障害福祉年金や老齢福祉年金との併給が認められました。また,この訴訟とともに発展した「堀木さんを守る会」の活動により,障害者や障害者の子どもの権利に対して世論を注目させる契機となりました。
今日,生存権の法的性格については,国民の生存を確保すべき政治的・道義的義務を国に課したにとどまる(プログラム規定)のではなく,それを具体化する法律によって具体的権利となり(抽象的権利),また裁判規範となるという点で,学説・判例がほぼ一致しているといえるでしょう。
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